【M&A】4億の提示が6億円に跳ね上がった秘密!IT・ベンチャーの売却額を最大化する相見積もりの極意
2026年06月10日
会社を売却する際、金額だけで相手を決めてよいのでしょうか。顧客との接点や開発体制、経営者の考え方など、売却後の成長に関わる要素もあります。
株式会社ウィルゲートは、SEO事業で築いた顧客基盤や経営者とのネットワークを生かし、IT・ベンチャー領域のM&Aを支援しています。共同創業者の吉岡諒さんに、複数の買い手候補を探す理由や、成約までの流れ、成長のための売却という考え方をうかがいました。
ゲスト:吉岡諒さん(株式会社ウィルゲート・専務取締役COO/共同創業者)
聞き手:竹村優(株式会社プロベル)
企業公式サイトはこちら:https://www.willgate.co.jp/
IT・ベンチャーの成長を支えるために、M&Aの選択肢を広げる
竹村:M&Aは、会社や事業を次の段階へ進める選択肢にもなると思います。まず、ウィルゲートM&Aでは、どのような企業を支援されているのでしょうか。
吉岡さん:IT・ベンチャーに強いM&A仲介サービスです。世の中には、IT以外の業種や事業承継を中心に支援する会社も多い一方、IT・ベンチャーに詳しい仲介会社は、まだ多くありません。その領域を強みとして取り組んでいます。
事業を立ち上げた背景には、日本でもM&Aをもっと活用してほしいという思いがあります。周りのベンチャー経営者を見ても、IPOを目指す方が多いと感じていました。
事業を作れる人が、売却後にまた新しい会社を始めたり、エンジェル投資家として若い人に資金を届けたりする。そうしたスタートアップの循環を作りたいと考えています。
竹村:売却して終わりというより、その経験や資金が次の挑戦につながることも見据えているのですね。これまで、どのような案件を扱ってこられましたか。
吉岡さん:取材時点で、開始から5年で73組が成約しています。メディア、SaaS、デジタルマーケティング支援、制作・開発、D2Cなどが多く、IT系が全体の9割を占めています。
売却額では1億〜10億円の案件が多く、2〜6か月で決まる案件が7割ほどあります。スタートアップやベンチャーにも検討していただきやすいよう、完全成功報酬の形で支援しています。
SEOで築いた顧客基盤から、事業に合う買い手を探す
竹村:私自身もM&Aを経験しましたが、買い手探しを一人で進めるのは難しいと感じました。ウィルゲートには、どのような買い手とのつながりがあるのでしょうか。
吉岡さん:M&Aに積極的な買い手として、アンケートを回収し、直接交渉できる企業が約2,500社あります。
その土台になっているのが、SEO事業の顧客基盤です。SEOの累計顧客は8,000社近くあり、そこに至るまでに、さらに多くの企業へ提案してきました。名刺交換なども含めると、会社全体で約8万件のリストがあります。
私自身も、SNSで連絡できる経営者が約2万5,000人います。こうしたつながりを生かし、多様な会社へアプローチできることが強みです。
SEOに取り組む企業は、デジタルマーケティングに力を入れていることも多いですよね。その顧客基盤が、IT・ベンチャーのM&A支援につながっています。
竹村:M&Aのためだけに集めたつながりではなく、事業を通じて関わってきた企業との接点があるのですね。上場企業が買い手になることもありますか。
吉岡さん:あります。当社経由で連絡できる上場企業は400社ほどです。グロース市場に上場している企業や、そこから成長してプライム市場へ移った企業などともつながりがあります。
ただ、製造業や建設などは、当社が得意とする領域ではありません。日本を代表する製造業のM&A担当者へ、必ずつなげられるというわけではないのです。
一方、IT・ベンチャーには十分なつながりがあるので、事業の相乗効果が見込める企業を探しやすいと考えています。実際にご相談や成約が多いのも、メディア、SaaS、デジタルマーケティング、システム開発、Web制作、エンジニア派遣、EC、D2Cなどです。
複数の買い手候補を比較し、金額と成長の両方を考える
竹村:事業に合う買い手を見つけるうえで、特に大切にされていることはありますか。
吉岡さん:大切なのは、複数の企業から買収の意向をいただくことです。私たちは、3社以上から意向表明をいただくことを重視しています。
例えば、「4億円で売れれば十分だ」と考えていた会社がありました。私たちが50社へ声をかけたところ、4億円を出してでもグループに入ってほしいという企業が4社現れました。その4社で条件を競い合う形になり、最終的に6億円まで上がった事例があります。
別の案件では、9億円で買いたいという企業を3社見つけられたことで、最終的に13億円になったこともありました。複数の企業から提案をいただけると、金額も上がりやすくなります。

竹村:候補が複数いることで、売り手も条件を比較しやすくなるのですね。ただ、売却後も事業を続けていくなら、金額以外も重要になりそうです。
吉岡さん:おっしゃるとおりです。相手の社長と価値観が合うか、社風やカルチャーが合うかも大切です。
売却する理由には、事業をもっと伸ばしたいという思いもあります。例えば、買い手に多くの顧客がいれば、そこへ自社の商品を提案して、成長につなげられるかもしれません。
開発面でも、エンジニアが1人の会社と500人いる会社とでは、プロダクト開発の進め方が変わります。いろいろな視点で相手を選べるよう、複数の候補を持つことが、よりよい相手と一緒になる可能性を高めると考えています。
買い手探しから基本合意、調査・契約へと進む
竹村:これからM&Aを考える方に向けて、相談から成約までの流れも教えていただけますか。
吉岡さん:最初に、複数の仲介会社やFAと呼ばれるアドバイザーに会い、比較して依頼先を決めます。契約を結んだ後、当社側で必要な資料をまとめて作成し、買い手候補を探していきます。
進め方のイメージとしては、少なくとも50社ほどをリストアップし、そのうち13社ほどが資料を見て検討する。6社と経営者同士の面談を行い、3社から意向表明をいただき、その中から相手を決めて基本合意へ進む、という流れです。
基本合意の後は、買い手がデューデリジェンス、いわゆるDDを行います。買収にあたって、事業や契約などにどのようなリスクがあるかを調べる段階です。
竹村:買いたいという意向が出た後も、その条件で進められるか、詳しく確かめる必要があるのですね。どのような点を確認するのでしょうか。
吉岡さん:例えば、契約に全額返金の保証が入っていると、将来、大きな返金が発生するかもしれません。あるいは、売り上げが10億円あっても、顧客が2社だけで、それぞれ5億円ずつだったら、1社との契約がなくなると売り上げが半分になります。
そうしたリスクを確認し、契約交渉を経て、最終契約とクロージングへ進んでいきます。
竹村:全体では、どのくらいの期間を見込むのでしょうか。
吉岡さん:当社では、買い手を探す前半に2か月ほど、その後、基本合意からDDや契約交渉を進める後半にも2か月ほどかかることが多いです。
早く進めるためには、買い手探しの期間を短くできるかがポイントになります。私たちは、IT・ベンチャーのネットワークに加えて、どの会社と相性がよいか、買い手が何を求めているかというビジネスモデルの理解を生かし、マッチングしています。

利益の状況を確かめ、売却後の成長も選択肢にする
竹村:立ち上げから5年、10年以内の企業もあると思います。売り上げや利益は、どのくらいあれば相談できるのでしょうか。
吉岡さん:買い手が、売り上げや利益を取り込みたいと考えているケースが多いので、主力事業そのものが赤字だと、難しいと感じます。
ただ、既存事業で営業利益が出ていて、新規事業への投資によって会社全体が赤字になっている場合は、話が違います。既存事業で3億円の営業利益がある一方、新規事業へ5億円投資している、といったケースですね。
私たちへの相談の目安としては、年間の営業利益が2,000万円以上あると、買い手が関心を持つことが多いです。買い手側にとっては、小さな会社を買う場合でも、ある程度の規模の会社を買う場合でも、手続きにかかる手間が大きくは変わらないためです。
竹村:売り上げだけでなく、どの事業で利益を出しているのかを見るのですね。売却額は、どのように考えるのでしょうか。
吉岡さん:私の感覚では、ベンチャーのM&Aは、純資産に年間営業利益の3〜8倍ほどを加えた範囲に収まることが多いです。例えば、純資産がゼロ、年間営業利益が2,000万円で、利益の5倍と考えるなら、企業価値は1億円というイメージになります。
一方、まだ会社を伸ばしていきたい方には、一度にすべてを売るのではなく、2段階に分けて売却する「2段階EXIT」という方法もあります。
竹村:先にグループへ入り、成長した後で残りの株式を売却する、という考え方でしょうか。
吉岡さん:そうです。例えば、大手の顧客基盤を使って商品を売れるようになれば、利益が大きく伸びる可能性があります。そこで企業価値が高まった後に、残していた株式を売却することもできます。
自力では長くかかる成長を、M&Aによる相乗効果で早められるケースもあります。株式を100%持ち続けることだけでなく、早い段階でグループに入り、その資金や顧客基盤を使うことも、若い経営者の選択肢に入れていただきたいと思っています。
竹村:売却額だけでなく、事業をどのような相手と、どの速さで成長させたいかまで考えることが大切なのですね。本日は、具体的な事例と進め方をお聞かせいただき、ありがとうございました。
吉岡さん:ありがとうございました。
株式会社ウィルゲートの強み・特徴
- 【IT・ベンチャーの事業を理解した買い手探し】:SEO事業で築いた顧客基盤や経営者とのつながりを生かし、メディア、SaaS、制作・開発などのM&Aを支援。業種ごとのビジネスモデルや買い手の目的を踏まえ、事業の相乗効果が見込める候補へアプローチします。
- 【複数候補から、金額と事業の相性を比較】:複数社からの意向表明を重視し、売却条件を比較できる状態づくりを目指します。価格だけでなく、経営者の価値観や社風、顧客基盤、開発体制なども考慮し、売却後に事業を伸ばせる相手を探します。
- 【売却後の成長まで見据える支援】:資料作成と買い手探しから、基本合意、DD・契約交渉、成約までの流れを支援。主力事業の利益や将来の成長を踏まえ、すべての株式を一度に売却する以外に、グループ入り後の成長を経て残りを売る2段階EXITという選択肢も提示します。
株式会社ウィルゲートの公式サイトはこちら:https://www.willgate.co.jp/
インタビュー動画はこちら:https://www.youtube.com/watch?v=LGZYh0r8D7U