失敗の法則から、経営を学ぶ。JPBA・西尾順さんが伝える「経営の教習所」と仕組み化の順序
2026年10月22日
商品や技術には自信があるのに、売り上げが伸びない。会社が大きくなるにつれ、社長が現場から離れられなくなる。そんな悩みに対し、一般社団法人 日本パーソナルビジネス協会(JPBA)は、経営を技術として学ぶ「経営の教習所」を運営しています。
なぜ成功事例ではなく「失敗の法則」から学ぶのか。知識を自社の実践につなげる研修と、信用・商品・決済・販売・集客・継続の6要素を整える順序について、代表理事の西尾順さんにうかがいました。
ゲスト:西尾順さん(一般社団法人 日本パーソナルビジネス協会(JPBA)・代表理事)
聞き手:竹村優(株式会社プロベル)
詳細はこちら:https://probel.jp/pro/p/192/
成功をまねる前に、失敗につながる行動を知る
竹村:まずは、現在のお仕事について教えていただけますか。
西尾順さん:日本パーソナルビジネス協会の代表理事を務めています。私たちは社長向けに「経営の教習所」という形で研修を行っています。
大事にしているのは、実践的であることです。「勉強になった」「良かった」で終わるのではなく、学んだことが売り上げや業績につながるか。組織や仕組みをどうつくるかということを、経営の技術としてお伝えしています。
竹村:20年間、同じカリキュラムを伝え続けているそうですね。どうして、長く使えるのでしょうか。
西尾順さん:成功するかどうかは、実際に行動してみないと分からない部分があります。社長の行動や人脈、タイミングによっても変わりますよね。一方、失敗は同じような理由で起こることが多く、再現性が高いんです。
そこで、私たちは「こうすると失敗します」ということを先にお伝えします。失敗につながる行動をやめていくと、結果として業績が上がる。その考え方を軸にしています。

デザインの相談から、経営を学ぶ場づくりへ
竹村:研修事業を始めたきっかけは、何だったのでしょうか。
西尾順さん:私は別の会社で、デザインやブランディングの仕事もしています。最初はデザインから始まり、ブランディング、さらに会社の経営や組織、商品の売り方まで、ご相談をいただくようになりました。
転機になった理由は2つあります。1つは、デザインを頼まれるときに「いい感じにお願いします」と言われることが多かったことです。それだけではつくれないので、どんな会社にしたいのか、どんなビジョンや理念があるのかをうかがう。そうすると、会社全体の方向性や仕組みについて悩んでいることが分かってきました。
なぜデザイナーの私に経営の相談をするのだろうと思い、事業再生を手がける親川政明に相談したんです。すると、事業再生の現場でも「いい感じにお願いします」という相談は同じだと言うんですね。
親川の話では、会社には本来の力があるのに、失敗の要因が足かせになっている。その要因を取り除くことで、本来の状態に戻り、V字回復したように見える。この考え方を形にしようとしたことが、協会の出発点になりました。
もう1つは、自分自身も経営に悩んでいたことです。会社をつくってから大手企業との取引が始まり、デザイナー、ディレクター、プロデューサー、経営者と役割が変わる中で、組織の規模によって課題が全く違うと感じました。
経験の長い社長に聞いても、その時代や業界、その人だからできた話だと、自分の会社でどうすればよいか分からない。コンサルタントに相談すると売り上げは上げてもらえても、その技術そのものを学べるとは限りませんでした。デザイナーにデザインを依頼しても、デザインの方法まで教えてもらうわけではないのと同じですよね。
社長自身の実力を上げたい、経営を技術として学びたい。そのための場所があればいいと思い、つくったんです。
竹村:経営を技術として学べる場が必要だと、ご自身の経験からも感じていたんですね。どのような段階の経営者が、相談に来られますか。
西尾順さん:受講される方では、年商1億円前後から、3億円、5億円、10億円へ伸ばしたいという方が多いですね。社長が現場からどう離れるか、社員にどう仕事をしてもらうかという、組織と仕組みの課題です。
技術や職人としての力はあるけれど、会社をどう切り盛りすればよいか分からない。そうした、役割が変わる段階で悩まれている方が多いかもしれません。
共通の原理原則を学び、自社で使える形にする
竹村:カリキュラムは、受講する人ごとにつくるのでしょうか。それとも、共通の内容を学ぶのでしょうか。
西尾順さん:失敗の法則を学び、それを取り除いていくという基本は共通です。経営をスキルとして考えているので、車の運転の教習所に近いですね。
性格が違っても、アクセルやブレーキ、ハンドルの役割は変わりません。状況を認知して、判断し、決断するという流れも同じです。車は練習して免許を取ってから運転しますが、経営は、やりながら、時には失敗しながら覚えることが多い。経営にも練習できる場所が必要だと考えています。
経営の原理原則は、知っている人は知っていても、知らない人には全く分からない。知らないからといって、能力がないわけではありません。「分かる」「できる」「教える」という順序で、身につけていくものだと思うんです。
例えば融資を受けるとき、どんな条件があり、面談や訪問でどこを見られるのか。そうした経験者が知っていることも含めて、経営をしている人が経営を伝えることを大切にしています。
竹村:実際の研修は、どのように進むのでしょうか。
西尾順さん:カリキュラムはオンライン上にあり、動画と資料を見ながら、小さなワークに取り組んでいただきます。それに加え、月2回、2〜3時間の研修を行います。
ワークに書いた内容が、自分の会社に合っているか分からないこともありますよね。そこで「その会社の場合は、こういう伝え方や表現にしましょう」と、内容を調整していきます。共通の原理原則を伝えつつ、各社に合わせたコンサルティングも行う研修です。最終的には、その会社の売り上げや業績につながることを目指しています。
面談はZoomなどで行っていて、北海道から沖縄まで、海外にいる日本人の経営者にも受講いただいています。業種も幅広く、これまで約40業種の方にお伝えしてきました。
竹村:教材で学び、面談では自社に合う形へ調整していくんですね。研修を受けた方には、どのような変化が出ていますか。
西尾順さん:私たちが調べているデータでは、6ヶ月間の研修で、期間内に約8割の方が業績を上げています。卒業後に実践を続けて、成果が出る方もいらっしゃいます。
卒業生だけが入れる「経営者倶楽部」というコミュニティもあり、継続してサポートしています。その中で、事業をさらに伸ばしている方もいますね。

研修中は、いま直面している経営の相談もできる
竹村:決められた研修時間以外にも、相談できるのでしょうか。
西尾順さん:研修期間中はChatworkを使い、24時間質問できるようにしています。カリキュラムの質問だけでなく、今のビジネスについても、回答できることにはお答えしています。
例えば、協業の話をどう考えるか、借り入れのための資料をどうまとめるか、人を雇うときにどう話を進めるか。社員が辞める理由や、組織が大きくなるときに踏まえておきたいことなど、具体的な相談があります。
竹村:経営者が実務で迷うことは、調べても細かなニュアンスまでは分からない場合がありますよね。
西尾順さん:そうですね。例えば、営業資料をつくるときも、社長向けなのか、担当者向けなのかで、伝える順番が逆になることがあります。何ページくらいに収めるか、どこを簡潔に伝えるかという、細かな部分もありますね。
普段なら少し悩んで流してしまうようなことでも、話を聞くと「そういう理由があったんですね」「以前の会社でそうしていた理由が分かりました」と、腑に落ちることがあります。
事業計画やPL・BSの考え方、売り上げが増えているのにお金が足りなくなる資金繰りの話もあります。単価をどう上げるか、新しい事業をどうつくるか、自分が分かっていることを社員にどう伝えるか。社員が忙しくしている中で、労働時間をどう減らすかといったことも含め、幅広くお話ししています。
集客の前に、信用・商品・決済・販売を整える
竹村:初めて相談に来られる方に、共通する課題はありますか。
西尾順さん:最初のブランディング、つまり価値の見せ方に課題があることが多いですね。体裁は整っていても、お客様からすると「誰のための商品なのか」「なぜこれをやっているのか」が分からず、売り上げにつながっていない。
他社がそうしているから同じように値段をつけたり、自分が売りにくいから心理的に値下げしたりすることもあります。売り上げは増えていても利益が出ない、単価の上げ方が分からないという相談もあります。
竹村:仕組み化は、どこから取り組むのでしょうか。
西尾順さん:まずは社長のビジョンを明確にし、会社の目的である理念をつくります。なぜこの会社をやっているのか、どんな会社や未来をつくりたいのか。そのうえで、仕組みを整えます。
仕組みは、信用・商品・決済・販売・集客・継続の6要素に分けています。この順序で取り組むことが大切です。順番がばらばらだったり、集客から始めたりすると、業績が伸びにくくなります。
まず信用がなければ、話を聞いてもらえません。社長や会社、商品の信用をつくる必要があります。次に、お客様が「それが欲しかった」と思えて、売れたときに利益が出る商品をつくる。自分たちの目線で名前をつけるだけでは、お客様に欲しいと思ってもらえないこともあります。
その次は決済です。銀行振込だけでなく、カードや分割払いなど、買いやすい仕組みを考える。そして販売。安い商品と高い商品では売り方が違いますし、社長は売れるけれど社員は売れないなら、台本をつくるなど、再現できるようにする必要があります。
成約する仕組みができてから集客を広げます。仮に成約率が0%なら、100人集めても売り上げにはつながりません。ところが、ここまでが固まっていないうちに広告を出してしまうことがあるんです。
販売して終わりではなく、お客様をどう継続して支援するかも考えます。
竹村:集客の前に商品や販売の仕組みを整え、販売後の支援まで考えるんですね。この順序は、実際のご支援でも使われているのでしょうか。
西尾順さん:私自身のデザインやブランディングの仕事でも、この順序で確認しています。商品はあるけれど信用が足りないのか、決済の選択肢が少ないのか、担当者が辞めて販売の仕組みが崩れていないか。どこが足りないかを見るためにも使っています。

「好きだから」の先に、お客様が得られるものを伝える
竹村:信用という点で、私はストーリーテリングを大切にしています。特に創業したばかりの会社では、なぜその商品を扱うのか、どんな思いで取り組むのかも、信用の1つになると考えていますが、いかがでしょうか。
西尾順さん:そうですね。お客様は、物の機能だけで選んでいるわけではありません。誰がやっているのか、なぜその人から買うのかも、選ぶ理由になります。
なぜこの会社をやっているのか。なぜ、あなたにこの商品を販売したいのか。その先に、お客様のどんな未来をつくりたいのか。お客様が直接聞くことはなくても、ホームページや営業の話、商品名などから感じ取ろうとしています。
竹村:伝えるときに、気をつけたいことはありますか。
西尾順さん:「前の会社でやっていたから」「良い商品に出会ったから」「好きだから」で止まってしまうことです。好きなのは良いのですが、お客様からすると「それが自分のために何になるのか」が分からないんですね。
以前、ライティングの仕事をしている方が「書くことが好きで、天職だと感じています。だから仕事をください」とお話しされていました。その思いはうれしいのですが、お客様のために何ができるかを聞くと、「分かりませんが、頑張ります」となってしまう。
その方を否定したいのではなく、本人も気づかないうちに、そうした伝え方になっていることがあるんです。私自身も、最初からできたわけではなく、同じように経営を学んできたので、気持ちは分かります。
「本当は別のことを伝えたかったのに、伝え方を間違えていたかもしれない」と見直すきっかけになり、その先のお客様が喜んでくれたらうれしいですね。研修を受けるかどうかにかかわらず、気づきがお客様の笑顔につながるなら、私たちも応援したいと思っています。
社長自身やご家族、社員、お客様が豊かになり、一緒に豊かな社会をつくっていく。それが、協会の活動に込めている思いです。
JPBAの強み・特徴
- 【失敗の法則から経営を学ぶ】:成功事例をそのまままねるのではなく、経営を妨げる要因を知り、取り除く考え方を伝えています。
- 【共通の学びを自社の実践へつなげる】:オンライン教材とワーク、月2回の研修を組み合わせ、各社の状況に合わせて内容を調整します。研修期間中はChatworkで実際の経営課題も相談できます。
- 【取り組む順序まで整理する】:ビジョン・理念を確認したうえで、信用・商品・決済・販売・集客・継続を順に整え、社長だけに頼る状態から仕組み化を進めます。
企業詳細・元動画
詳細はこちら:https://probel.jp/pro/p/192/
一般社団法人 日本パーソナルビジネス協会(JPBA)公式サイト
インタビュー動画はこちら:https://www.youtube.com/watch?v=-dNvUfhYzzg