不眠、めまい、倒産。それでもあの2年間が人生を変えた - NYマーケティング代表 中川裕貴
2026年06月10日
システムエンジニアとして開発に携わっていた会社で、急に社長を任されることになったら、何を考え、どう動くのでしょうか。
NYマーケティング株式会社の中川裕貴さんは、前職でナイトレジャーのポータルサイト「ポケパラ」を立ち上げ、月間1億PVまで成長させた後、約70人の会社の社長を2年間務めました。組織運営に向き合った日々から、会社の廃業、独立へ。その経験が、現在の経営やパートナーとの仕事にどうつながっているのかをうかがいました。
ゲスト:中川裕貴さん(NYマーケティング株式会社・代表取締役社長)
聞き手:鷲見洋之
中川さんの詳細はこちら:https://probel.jp/pro/p/22/
自分で開発した「ポケパラ」を育て、突然社長を任される
鷲見:現在の事業と、これまでのご経歴から教えてください。
中川さん:主にSEOのコンサルティング支援を行っていて、BtoB、BtoCの両方に対応しています。最近は自社でツールを開発し、それを用いた支援や、SEOに取り組む若手のコミュニティ運営もしています。
21歳のときに、前職の会社へシステムエンジニアとして入社しました。当時はまだ「ポケパラ」がなく、入社から1年ほどたったころに開発を任され、ゼロからつくりました。
完成したら、今度は売る必要があります。そこでSEOやSNSなどのマーケティングにも取り組み、最終的には月間1億PVまで成長させました。
鷲見:開発だけでなく、集客まで担当されていたのですね。そこから社長になったのは、どのようなきっかけだったのでしょうか。
中川さん:親会社のオーナーがいて、私がいた子会社にも社長がいたのですが、その社長が辞めることになり、私に話が来ました。かなり急で、話をいただいてから1か月後には社長になるような展開でした。
鷲見:突然のお話だったと思いますが、最初はどのように受け止めましたか。
中川さん:「来た」と思いました。もともと稼ぎたいという野心があり、代表になって権限を得て、事業を展開して売り上げを伸ばせば、評価や給料にもつながるのではないかと考えていたんです。
ただ、引き継いでみると、それまで見えていなかった組織の問題がありました。

事業を伸ばすだけでは解決しない、組織運営の難しさ
鷲見:社長になってから、どのような状況が見えてきたのでしょうか。
中川さん:アルバイトも含めて70人ほどの社員がいたのですが、会社としてのビジョンや理念がなく、社内がばらばらな状態でした。人に関する問題も多く、オーナーからのプレッシャーもあれば、社員からさまざまなことを言われることもありました。
急に社長が変わったこともありますし、私自身、物事をはっきり言うタイプだったので、それが苦手な人もいたと思います。辞めた人もいましたし、残った中にも不満を持つ人がいました。その話が回り、オーナーに呼ばれることもありました。
「もっと事業に集中したいのに」と思うことはありましたね。「ポケパラ」の業績は順調でしたが、組織の中で対応しなければならない問題が多かったんです。
鷲見:当初から、精神的な負担が大きかったのでしょうか。
中川さん:最初はやる気に満ちていました。ただ、開発やマーケティングの実務を続けながら、社長としてビジョンや評価制度をつくり、採用を強化するためにホームページや制度も整えていました。まずは、物理的に時間が足りないことが大変でした。
経営については、社長になってから勉強しました。毎日のように組織や経営の本を読み、現場で実践して、また学ぶことを繰り返していました。当時の彼女、今の妻とカフェにいても、ずっと本を読んでいたくらいです。
鷲見:実務に加えて、経営の勉強も必要だったのですね。当時は、どのようなサイクルで働いていましたか。
中川さん:東京、名古屋、大阪に事務所があり、70人弱の社員と定期的に面談をする必要がありました。移動も面談もあり、時間があれば開発をし、会議や採用の対応もする。日中はそうした実務に充て、夜も遅くまで働いていました。
学ぶ時間は土日などに取っていたので、休みはほとんどありませんでした。身近に経営のロールモデルがいたわけでもなく、稼ぎたいという気持ちをもとに、自分で勉強して進めていました。

業績を伸ばしても続いた負担と、会社の廃業
鷲見:その2年間で、特に大変だったことを挙げるとしたら何でしょうか。
中川さん:夜、眠れなかったことです。寝たけれど、寝ていないような状態を繰り返していました。寝ようとしても、翌日やることや問題が頭に浮かび、「どうしよう」と考えてしまうんです。
社長になった1年目は勢いで進めていましたが、2年目くらいから、そうしたことが起きたと記憶しています。一番きつかったのは、朝起きたときにめまいが強く、まっすぐ歩けなかったときです。そのときは、さすがに休んで病院へ行ったと思います。
鷲見:そうした状況の中でも、組織を運営するうえで意識していたことはありましたか。
中川さん:肩書きは社長でしたが、自分の中では部長のようなイメージもあって、とにかく事業を伸ばすことに集中していました。実際、私に代わってから売り上げは伸びました。
東京にはまだ営業を採用する余地があったので、そこにも力を入れました。採用で成果が出て、さらに売り上げも上がりました。ただ、結果を出せばよいと思っていても、それだけでは解決しないこともありました。
鷲見:人も売り上げも増えていた一方で、その後、会社は廃業することになったのですね。
中川さん:はい。コロナが来て、会社は廃業しました。社長になってから、ちょうど2年くらいだったと思います。当時は早く感じていたと思いますが、振り返ると長かったですね。
鷲見:社長として取り組んでいた会社が廃業すると決まったとき、どのような心境でしたか。
中川さん:少し安心した気持ちや、解放感がありました。事業を伸ばしたい気持ちはずっとありましたが、思うようにいかないもどかしさもあり、体の疲れもありました。その毎日がいったん終わると思ったときに、「逆によいのかな」と感じたんです。
経営から開発へ戻った1年を経て、自分の会社を持つ
鷲見:一方で、会社がなくなると、ご自身の仕事も変わりますよね。その後はどうされたのでしょうか。
中川さん:廃業したのは会社で、事業自体は残っていました。親会社から業務をいただき、1年ほどシステム開発の仕事をしていました。
経営をする立場から、作業をする立場に戻ったので、そこはつらさもありました。しかも、会社が廃業する1年ほど前に新築マンションを購入していて、廃業直前くらいに完成し、住宅ローンの支払いが始まったんです。なおさら焦りがありました。
鷲見:そこから、現在のNYマーケティングを立ち上げたのは、どのような流れだったのでしょうか。
中川さん:1年間は個人事業主として仕事をして、そこで自信がついたので、その後に法人化しました。取材時点では、法人の5年目が終わるところです。
約70人との面談が、今のパートナーとの仕事にも生きている
鷲見:現在ご自身で会社を経営する中で、前職での社長経験や、難しかった出来事はどのように生きていますか。
中川さん:まず、経営者として高い視点で考える経験がついたことがあります。それから、プレッシャーに対する耐性もつきました。当時は体調を崩すほど大変なこともありましたが、今は以前よりも耐えられるようになったと感じています。
もう一つは、人の気持ちを考えながら仕事を進めることです。当時は70人ほどの社員と面談し、いろいろな感情や意見を聞いていました。今もフリーランスのパートナーがたくさんいるので、相手の気持ちをくみながら仕事を回すうえで、当時の経験が生きていると思います。
鷲見:急に責任のある役割を任されたり、自分ではコントロールできない事情で壁にぶつかったりしている方もいると思います。そうした方に伝えたいことはありますか。
中川さん:当時の自分にも伝えたいのですが、まずは外の世界を知ることが大切だと思います。会社員のころは、その会社以外のことをほとんど知りませんでした。起業することや、フリーランスという働き方も、全く知らなかったんです。
そうした知識や世界を学びながら、急に仕事を任されたのであれば、目の前の仕事を一生懸命にこなす。そのうえで、その会社に残るのか、別の会社へ行くのか、独立するのかを考える、という形でよいのではないでしょうか。

鷲見:社長としての2年間から、その後の独立、今の経営まで、どのようにつながっているのかをうかがえました。本日はありがとうございました。
中川さん:ありがとうございました。
NYマーケティング株式会社・中川裕貴さんの強み・特徴
- 【開発とマーケティングの両方を経験】:「ポケパラ」をシステムエンジニアとしてゼロから開発し、その後はSEOやSNSを使った集客にも取り組み、月間1億PVまで成長させた経験を持ちます。現在はBtoB・BtoCのSEO支援に加え、自社開発ツールを用いた支援やコミュニティ運営にも取り組んでいます。
- 【事業の実務と会社経営、双方の視点】:約70人の会社の社長として、開発・マーケティングの実務と並行し、ビジョンや評価制度の整備、採用、社員との面談を経験。事業の数字を伸ばすだけでは解決しない組織運営にも向き合った経験が、現在の経営の土台となっています。
- 【相手の気持ちをくみながら進めるパートナー連携】:各拠点の社員と面談し、多様な感情や意見を聞いてきた経験を、現在のフリーランスのパートナーとの仕事にも活用。専門的な業務だけでなく、一緒に働く人の考えを受け止め、仕事を進めることを大切にしています。
中川さんの詳細はこちら:https://probel.jp/pro/p/22/
インタビュー動画はこちら:https://www.youtube.com/watch?v=vES4Pe9fZCw